平成16年度は、日本保険学会における共通論題「販売チャネルの多様化の現状と課題」において、募集規制の観点から、「募集チャネルの多様化と保険募集規制の課題」と題する報告を行い、多様な保険募集機関のいかなる属性に着目して規制を再構築すべきか、という見地から報告を行った。 本研究課題との関係においては、募集主体の属性が多様化し、とりわけ、銀行のように金融商品の組成業者(保険会社)と比肩し得る、あるいはこれを凌駕する高い能力と交渉力を有する募集主体の出現をもって、自主規制による行為規制構築の在り方が異なり得る点が重要である。即ち、保険業法を例にとると、現行規制においては、保険募集人は保険会社の指揮命令下に置かれ、保険会社が適切に募集人の業務を監督し得ることが前提とされているが、保険会社が募集委託を行った銀行に対して適切に業務を監督し得ると期待できない場合があり得るので、顧客の利益を害した場合の損害賠償責任、個人情報保護などの観点から、独立性の強い募集機関の業務につき、特別の行為ルール(弊害防止措置)、民事責任ルール(代位責任の制限)、紛争処理ルール(募集機関の責任における紛争解決)を設定することが求められる。かかる事態において、既存の事業者団体を単位とする自主規制を構築しようとすれば、保険という商品の組成業者の団体と販売業者の団体が乖離し、自主規制の構築は阻害される方向に作用するであろう。しかし、業法の体系が、業者ではなく商品ないし業務に着目した規制体系へと転換されるならば、これに対応して、商品体系に従った自主規制の体系を構想し得るものである。 なお、平成16年度の後半には、金融庁監督局内に平成17年4月1日に設置された「保険商品の販売勧誘のあり方に関する検討チーム」への参加に向けて、関係各方面との連携を取り、準備作業を行った。その成果は平成17年度の前半に公表する予定である。
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