金融庁が平成17年にスタートさせた金融改革プログラムは、金融サービス利用者の保護と利便性を高めることを目標として、金融商品の販売勧誘ルールの見直しを課題とする点で、本研究の視座に沿うものである。監督官庁が行為規制ルールの整備に乗り出したことで、本研究のアプローチである自主規制の活用は、研究の主役から派生的論点へと位置づけの変更を余儀なくされた。そのような状況の下、申請者は「保険商品の販売勧誘のあり方に関する検討チーム」への参加を許され、平成17年度には、保険商品の説明義務および適合性原則に関する諸ルールのあり方について議論に参加した。 説明義務のあり方については、従来のルールの問題点が、顧客に提供される情報の肥大化傾向にあるとみて、顧客の商品選択にとって必要な重要事項は、募集プロセスの各段階で異なること、顧客に提供する重要事項の総量を、情報提供の目的に即して合理的分量にコントロールするべきである。その上で、勧誘の早い段階で交付される契約概要、契約締結前の確認書面である注意喚起情報の双方につき、記載内容をいかなる見地から確定すべきか、更には、多様な勧誘方法の有り様を踏まえて、いかなる時期にいかなる方法で情報提供すべきかにつき、私論を提示した。 引き続き、保険募集における適合性原則の考え方につき、私見を公表する機会を早急に得たい。この局面では、投資取引と区別された意味で顧客の保険加入目的に即した勧誘を行うことを求める法原理として適合性原則を把握し、原理としての適合性原則を具体化した諸々の適合性ルールとして、顧客との合意または顧客の合理的信頼に基礎をおく形で募集人が引き受けた助言の公正さを確保するルール、助言の前提として勧誘の際に提示する複数商品の公正な比較を確保するためのルール、商品比較を経て助言する乗合募集ビジネスの認知、クーリングオフ権の拡大などが必要である。
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