本年度は、金融取引における約款の相殺条項に関する研究を行うため、前年度に収集した金融取引関係に関する外国文献および国内文献資料を中心に研究を実施、その成果の一部を研究会等において公表した。特に、今年度は、前年度までに収集した資料および情報をもとに、外国為替取の資金決済システムとして活用されているネッティングに関してその相殺構造について研究を実施した。とくに、ISDA2002年版マスター契約におけるクローズアウト・ネッティング条項を中心に検討をこころみたが、そこでは、マスター契約のクローズアウト・ネッティング条項は我が国における相殺要件および効果、実行方法のほぼ全てを排除する構成になっており、また、その債権担保としての構造も、不特定な債権を不特定な債務で担保する包括的な担保手段としての構造を有していることが明らかとなった。 また、これらの研究と平行して、前年度までに収集した外国文献を基礎にして、主にドイツ、韓国における相殺の担保的機能と相殺の第三者効に関する議論について検討を加え、我が国における同問題に対する示唆について検討を試みた。特に韓国法では相殺の第三者効がドイツ法と同様に制限的に解されていることが明らかになり、無制限的な相殺権保護を行う日本法との対比が明確になった。これら、一連の本年度の研究成果は、平成18年3月25日に広島大学で開催される日本土地法学会中国支部ミニシンポジウムおよび平成18年5月13日に関西学院大学で開催される法社会学会において研究報告を行う予定となっている。
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