早稲田法学誌上において、EUの裁判システムを、主に内国手続よりもかかってしまう「時間」への対策に主眼をおいて分析し、将来のアジアの国際民事裁判所を展望した「国境を越えた民事訴訟システムと『時間』的価値一EU裁判制度の経験と模索から一」(早稲田法学79巻3号37頁以下)を発表した。 また、これに関連して、比較法研究所で招聘したダグマー・ケスター=ヴァルチェン教授(ミュンヘン大学比較法研究所長)の講演会を行い、そこでの報告原稿を基にした論説「国際訴訟法における新たな展開」の翻訳を比較法学38巻1号に発表し、ハーグ条約プロジェクトにおける合意管轄の問題、域内共通の執行名義を用いる民事執行やヨーロッパ督促手続の導入計画まで含めた国際的司法システムの最近の動向を紹介した。 さらに、内国手続における「時間」研究の領域では、私が調査分析に加わった司法制度改革審議会「民事訴訟利用者調査」データの、実務法曹(裁判官・弁護士)と研究者(民事訴訟法、社会心理学、統計学)による二次分析の研究会(代表・佐藤岩夫東京大学社会科学研究所助教授)に参加し、『利用者から見た日本の民事訴訟(仮題)』(日本評論社)で、裁判後の「履行」分野について、分担執筆予定である。 なお現在進行中の研究としては、時間的に現実の損害額が可変しうる後遺障害の治療費等の定期金賠償方式について、時間的な実損害変動を民事訴訟において捕捉するための分析をすべく、各種裁判例・資料を収集中である。
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