本年度は、イギリス・レシーバー制度の大枠・骨格を明らかにすることを目標とし、次のような研究実績を得た。その結果は、すでに研究を一段落させているドイツ強制管理制度にきわめて近いというものであった。すなわち、まずレシーバーは係争物件を所有者等に占有させることが不適当な場合に、その財産を管理するものであり、その法的性格をめぐっては、債権者の代理人と考える説や債務者の代理人と考える説などが対立している。また、レシーバーが管理する財産について、その不可侵性が特に強調されており、正当な権利者も裁判所の許可なくレシーバーの財産管理を妨げることができないとされている。このことは、レシーバーの任命が不法・不適当であった場合でも同様である。第三者による侵害に関しては、その侵害は必ずしも直接かつ有形的なものであることが必要ではない。その侵害行為は処罰の対象となり、イギリスでは刑事的対処が以前からなされている。民事上もInjunction差止命令が可能である。さらに、レシーバーは善良な管理者の注意をもって管理にあたらなければならないとされており、自己の過失により生じた損失についてはすべて責任を負わなければならない。そして、レシーバーは計算報告書を作成し裁判所に提出しなければならないとされている。以上、イギリス・レシーバー制度の骨格が実に、ドイツ強制管理制度に類似するということを述べてきた。これらの成果を来年度の研究に活かし、レシーバー制度の実態解明に取り組みたいと考える。
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