本年度は、新株予約権を用いた敵対的企業買収の防御策を対象に研究を実施した。 まず、新株予約権を敵対的企業買収の防御策として発行することがわが国の商法の解釈として許容されるかについて検討をした。これは、前年度より継続する研究となっている。この論稿では、新株予約権の単独発行は、リアル・オプションとして評価可能なプロジェクトの資金調達手段として有用である旨を提示し、敵対的企業買収の防御策として新株予約権を発行する場合については、いわゆる主要目的ルールが適用されうることを提示している。次に、「取締役会決議に基づく新株予約権の発行を用いた敵対的企業買収企業買収の防御-日本版ポイズン・ピルの問題点を中心に-」と題する論稿を判例タイムズ1117号に掲載した。この論稿では、新株予約権が持つコール・オプションとしての本質に着目し、いわゆる日本版ポイズン・ピルの問題点を検討し、取締役会決議に基づいて新株予約権をポイズン・ピルとして発行することに対して慎重な結論を導いている。さらに、企業買収規制において、オプション発行による企業買収の防御策をどのように位置づけるべきかを検討を進めた。この点については、「支配株式の取得規制と敵対的企業買収への防御策」と題する論稿を名古屋商科大学総合経営・経営情報学論集に連載中である。この論稿では、企業買収の規制方法として、支配株式の取得に関する強制公開買付規制とポイズン・ピルによる敵対的企業買収の防御を対象とし、それぞれがどのように企業買収を制限するかを比較検討し、企業買収規制のあり方を提示することを目的としている。また、広瀬裕樹愛知大学法学部専任講師(2004年より同助教授)と共同で、中小規模株式会社の実態調査を実施した際に、新株予約権の発行状況なども調査した。この実態調査は、「中小規模株式会社の実態」と題する論稿として商事法務1674号に掲載されている。
|