研究概要 |
本年度は、2つの観点から、EU統合過程における各種の法接近の手法の比較分析を行った。 第1に、氏名の変更とEU市民権に関する、EC裁判所の2003年10月2日先決裁定(Case C-148/02, Carlos Garcia Avello v.Belgian State)を検討した。この事件では、ベルギーとスペインの重国籍者について、EU市民権とそれに基づく国籍差別禁止の原則の適用により結果として、スペインで行われた氏名の変更をベルギーにおいて承認することが求められたと見ることができる。この先決裁定は、最近のEC裁判所の法人に関する1999年以降の、Centros, Ueberseering, Inspire Artの3事件と同様に、相互承認原則が物の自由移動の分野においてもEU法において拡大適用されてきている一連の流れの中に位置づけられる。第2に、この相互承認原則について、EU法だけでなくより一般的に検討するために、同性登録パートナーシップに関する比較国際私法について検討した。この問題を取り上げたのは、登録パートナーシップに関して登録地国法の適用という形で、いわば相互承認原則の適用が比較国際私法において有力に主張されているごとによる。検討の結果、上記の現象が確認され、次年度においては、相互承認原則がどのような場面において用いられるべきであるかの検討を引き続き行い、翻って、EUにおいてどのような法接近手法がどのような場面で用いられるべきかについて、検討を行う予定である。
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