平成15年度の研究は以下の方向で行われた。 第1に、英国、ドイツ、日本の諸国における省庁研究のサーヴェイである。これについては基礎文献の収集と部分的な分析にとどまった。 第2に、比較省庁研究の枠組みについてのサーヴェイである。これについては、省庁内の政策形成の中枢である官房組織に焦点を当てて、上記3カ国に加えて、大陸諸国ではフランス、アングロサクソン諸国ではオーストラリアを対象にした研究との関係を探った。 第3に、諸外国の公務員制度改革についてのサーヴェイである。これについてはいわゆるNew Public Managementの改革と概括されるものの内、公務員の「能力」評価を軸にした人事管理方式である、「能力運動」を主たる対象とし、各国におけるその展開を比較し、中でも日本の公務員制度改革においてしばしば参照される英国公務員制度についての研究を行った。これによって、「能力運動」の前提に教育機関における能力評価の客観化の動きがあることなど、本研究が当初モデルにしたクリストファー・フッド&マーティン・ロッジの研究の制度的前提に対する理解を深めることができた。 第4に、日本における公務員制度改革の動向について研究を行った。これについては一方で、所属機関の東北大学における公共政策大学院の設置準備過程において、各省より派遣された現役公務員との間で、大学院における成績評価のあり方及び各省における任用・昇進における人事評価基準との整合性について、議論を行った。そのごく一部をカリキュラム紹介の形で発表することができた。またこれと平行して人事院職員との懇談を定期的に行い、現在進行中の公務員制度改革の方向について情報を得た上で、上記の研究の中間報告を行い、「能力評価」を一層押し進めるよう提言を行った。
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