本研究課題に関する平成15年度の研究実績は以下のとおりである。 第一に、中国型コーポラティズムの検証の前提として不可欠な作業として、中国における国家-社会関係に関する既存研究を多元主義、市民社会論、コーポラティズム論の観点から整理し、同時並行的に進めている実態分析の学問的位置づけを明確にした。この成果は、小嶋華津子「国家と社会のあいだ」(国分良成編『中国政治と東アジア』慶應義塾大学出版会、2004年3月、第6章)に掲載した。 第二に、中国の集団世界全般に関する現状と方向性を検証するため、(民政部門に登記された)社会団体を対象に北京大学政治発展・政府管理研究所公民社会研究中心のチームとともに共同研究を進めた。その成果は小嶋華津子・辻中豊「『社団』から見た中国の政治社会-中国『社団』調査を基礎にして-」(『日本比較政治学会年報』2004年)第四章に整理した。 第三に、労働社会保障をめぐる政策決定過程について、歴史および現状分析を行った。歴史に関しては、建国直後から60年代前半、および改革・開放政策後の80年代に焦点をあてたこれまでの研究に引き続き、プロレタリア文化大革命期の労働者の行動について、小嶋華津子「プロレタリア分化大革命と労働者(プロレタリアート)」(国分良成編『中国文化大革命再論』慶應義塾大学出版会、2003年6月、第9章)にまとめた。また、現状分析に関しては、文献資料を収集すると同時に、基層工会(労働組合)主席に対する大型アンケート調査のための質問票作りを担当し、労働関係学院工会学系の調査チームとの間に共同研究プロジェクトを発足させるべく貢献した。
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