初年度である平成15年度は、現在サウディアラビア政府が推進している政治経済改革に関して、政教分離政策の特質、政策調整方法の変化、社会階層の影響という観点から分析を加え、今後の民主化や自由化の可能性に関しても検討した。サウディアラビア国民の中には、積極的改革派、漸進的改革派、現状維持派という3つの政治的傾向があることを明らかにした。さらに中央政府の政策決定に最も影響を与えている社会階層・集団は、サウード家、官僚、財閥、イスラーム学者であると特定した。1980年代からの政策調整方法の変化について跡付けながら、2003年の全般を通じ、サウディアラビアでは諮問評議会の役割が高まり続けたという事実やその背景について明らかにできた。理論的な検討の成果としては、イランの政治体制との比較から、サウディアラビアのワッハーブ主義における政教分離政策の特質に関して明らかにした。 初年度である平成15年度はインターネットやコンピューターによるデータ収集による情報収集体制を確立できた。この成果を活用し、サウディアラビアにおける内政動向に関する報道を日々収集し、データを保存した。またサウディアラビア現地での調査では、諮問評議会議員やジャーナリストなどから聞き取り調査を行うことができた。さらにインターネットを通じて米系シンクタンクが発表している情勢分析を収集し、分析枠組みを批判的に検討した。以上の成果を学術雑誌、通産省や財務省が主宰する石油情勢研究会、参議院の調査委員会誌に発表した。 総括すると平成15年度は、サウディアラビアの行政機構と社会階層という内政の根幹に関する部分の調査と分析を今後も継続するために必要最低限の研究体制を整え、予想以上の研究成果をあげることができた。今後は、初年度と同じ研究作業をさらに継続するほか、イスラーム運動、サウード家、米国などの外資の影響など、サウディアラビア研究では最も分析が困難とされてきた要素に関しても情報収集の作業を行い始めることとしたい。
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