研究概要 |
本年度は、第1に、経済産業研究所が主催していた「危機の政治学研究会」(代表:久米郁男早稲田大学教授)で、真渕勝(京都大学教授)、Torsten Svensson (Ass.Prof, Uppsala University)とともに行っていた、日本とスウェーデンの金融危機の比較研究について、研究成果をまとめた。ここでは、政府と金融機関との関係の差異が、両国の政策担当者の責任回避戦略を異なるものとし、それが、両国の金融危機に対する政策対応の違いをもたらしたことを論証した。本論文は、本年10月刊行予定の『レヴァイアサン』に掲載されることが決まっている。第2に、経済産業研究所が主催していた「バブル問題研究会」(代表:村松岐夫学習院大学教授)で行っていた、1990年代前半の日本における金融問題の先送りについて、研究成果をまとめた。ここでは、日本で長期間にわたり、金融問題に対して抜本的な対応策がとられなかったのは、金融危機管理を本務とし、それに長期的観点から取り組む組織が日本にはなかったからだということを論証した。本論文は、村松岐夫編著『平成バブル 先送りの研究』(東洋経済新報社)の第6章として、公刊された。第3に、1980年代の日本と1990年代のアメリカにおける株価バブルの政治的要因について、比較研究を行い、研究成果をまとめた。ここでは、両国ではともに、一般財の物価が安定していたがゆえに、株価が高騰したにもかかわらず、金融引き締め政策が発動されず、バブルが大規模なものになったこと、そして物価が安定していたのは、労働賃金が抑制されていたことと、民間経済主体が、中央銀行のインフレ抑制的な金融政策に対し、高い信認を与えていたことが原因であることを論証し、このメカニズムが従来の比較政治経済学では見過ごされてきたことを指摘した。本論文は、本年6月刊行予定の『比較政治学会年報 第7号』に掲載される。
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