本年度は欧州安全保障協力機構における信頼醸成措置のケーススタディ、分析をすすめるとともに、地域的な安全保障枠組との関連を視野に入れた研究を主に行った。とくに欧州安全保障に関しては、EUの招聘を受け、1週間にわたってブリュッセルのEU本部他で関係者、識者とのインタビュー、議論の機会をあたえられ、EUの統合過程と地域安全保障、アジア地域との相違、あるいはそこにおける信頼醸成措置の位置づけなどについて幅広く考察する機会を得た。また昨年度に引き続き、地域安全保障のなかでアメリカの存在の意味の重大さに鑑み、アメリカ外交安全保障政策、とくにアジア地域安全保障における日米関係についても検討の視野に入れた。この点と信頼醸成措置との直接的な関連についてはなお概念的な整理が必要であるがこれは今後の課題とする。さらに、本研究の遂行支援のため、山梨大学戦略的プロジェクト経費による補助を受け、ベトナムにおいて、ASEANと東アジア共同体、中国、インド等地域大国との関わり、日中、日米関係、また日本の外交政策などについて、現地外交官、研究者とのインタビュー、意見交換、現地調査などをおこなうことができた。これは本研究において信頼醸成措置概念についての直接的な研究というよりはその基盤的理解、理論構築に寄与するものである。最終年度の来年度は、これまで拡散気味であった研究をより中核的なテーマに焦点を合わせて一定の成果にたどりつくこととしたい。
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