昨年度の調査研究によって、南東欧地域においてUNDPが構築しようと努めてきた早期警報システムは、域内各国においてその取り組み状況が違い、地域が抱える共通の脅威である麻薬や人身売買といった問題などついては、必ずしも機能していないということが分かった。また、域内各国で発行されている早期警報報告書で示されている各国の事情やデータが、どれほどニューヨークの国連本部で共有されているのか、またどれほど信頼されているのかが疑問として残った。そこで、最終年度にあたる今年度は、2004年6月1日から6月5日までニューヨークに赴き、UNDPの担当官および国連本部事務所の担当官に、以上の点に関してインタビューを実施した。その結果、国連本部の政務局に勤務する担当官からは、UNDPの報告書が有意義なことは認めながらも、そこからの情報だけに頼るのではなく、現地NGOなどのコンタクト・パーソンを通じて個人的に情報を入手し、UMDPの情報とのクロス・リファレンスをかけることで意思決定に役立てているとのコメントを得た。また、早期警報に関して国連システムにおける各機関の活動を調整する枠組み(UN Framework for Coordination On Early Warning)が存在するが、それを担当する部署の人員はたった1名のみであり、しかも枠組みの存在すら十分に認知されていないことから、それが有効には機能していない現状が判明した。2年にわたる調査研究の結果、国連の各機関が早期警報についての活動を活発化させてはいるものの、それは独立した活動にとどまり、システムとして情報を共有し分析するといった体系的な活動には必ずしも至っていないことが分かった。ルワンダや旧ユーゴにおける失敗の教訓が生かされず、国連はシステムとしては依然として早期警報についての十分な能力を持っていないと言える。
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