ガス体市場の経済分析

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15730091
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 松村 敏弘 東京大学, 社会科学研究所, 助教授 (70263324)
• キーワード: transport cost / network / public firm / privatization / R and D / anti-trust / local monopoly / delivered pricing

研究概要

ガス体市場においても、その輸送費用及びプラント等の立地は重要な問題である。輸送費用は製品価格に転嫁され、一括して料金として請求される。つまり、delivered pricingが基本となる。本研究では、delivered pricing modelの基本的な性質を分析し、均衡における立地パターンとその経済厚生を分析した。得られた成果の一部は清水氏との共同論文としてEconomics Bulletinに掲載された。
都市ガス事業においては、地方自治体経営の公企業の民営化が問題となった。これに関して、混合寡占市場のモデルを使って公企業の行動と民営化の効果を分析した。その結果、公企業が果たすべき役割は、競争相手の性質に強く依存することが明らかになった。その成果の一部はSouthern Economic Journal及び、Bulletin of Economic Researchの2本の論文によって公表された。
さらに、都市ガス事業においては地域独占と独占禁止法の関係が重要となる。従来都市ガス産業は、地域独占が認められ、その活動は事業法によって規制されてきた。これに対し、近年の大口市場の自由化にともない、地域独占の範囲が小さくなると同時に、規制の体系が事業法による事前規制から、独占禁止法による事後規制へと変わりつつある。この状況を分析するには、local marketを扱うspatial modelを使った独占禁止法の分析が不可欠である。本研究ではこの方面でも研究を進め、その最初の成果がCanadian Journal of Economicsに掲載された論文で公表された。
また、都市ガス市場の制度改革に関して、ネットワーク設備に対するオープンアクセスを整備することは、ガス事業者の研究開発投資の誘因を損なうとの議論があった。また、分散型電源の開発にはガス事業者が大きな役割を果たしている。したがって、この産業でも研究開発を分析することは重要である。本研究ではこの方面でも研究を進め、望ましい研究開発の方向性や補助制度のあり方について研究した。その最初の成果がEconomics Bulletinおよび社会科学研究に掲載された論文で公表された。

研究成果

• [文献書誌] Toshihiro Matsumura: "Strategic R&D Investments with Uncertainty."Economics Bulletin. 12・1. 1-7 (2003)
• [文献書誌] Toshihiro Matsumura: "Endogenous Role in Mixed Markets : A Two Production Period Model."Southern Economic Journal. 70・2. 403-413 (2003)
• [文献書誌] Toshihiro Matsumura: "Stackelberg Mixed Duopoly with a Foreign Competitor."Bulletin of Economic Research. 55・3. 275-288 (2003)
• [文献書誌] Toshihiro Matsumura: "Consumer-benefiting Exclusive Territories."Canadian Journal of Economics. 36・4. 1007-1025 (2003)
• [文献書誌] Daisuke Shimizu, Toshihiro Matsumura: "Equilibria for Circular Spatial Cournot Markets."Economics Bulletin. 18・1. 1-9 (2003)
• [文献書誌] 松村敏弘: "不確実性下での戦略的研究開発投資"社会科学研究. 53. 17-26 (2004)
• [文献書誌] 競争政策研究会: "産業再生と企業結合"NTT出版. 374 (2004)