都市ガス市場でもLPガス市場でも、その輸送手段及びプラント等の立地の選択は重要な問題となる。例えばLNGに関しては、大型外航船と大型LNG基地及びパイプラインまたはローリの組み合わせから、内航船、鉄道輸送、バルク郵送など、輸送形態の多様化が進み、輸送手段の選択が競争形態に大きな影響を与えるようになってきた。輸送費用は製品価格に転嫁され、一括して料金として請求される。つまり、delivered pricingが基本となる。本研究では、delivered pricing modelの性質を分析し、均衡における輸送手段の選択、立地パターンとその経済厚生を分析した。また、このモデルが立地に関する投資の問題に如何に応用できるかについても研究を進めた。得られた成果の一部はReview of Development Economicsに掲載された論文によって公表された。 都市ガス事業においては、地方自治体経営の公企業と民間企業の経営格差や、その公企業の民営化が問題となった。これに関して、混合寡占市場のモデルを使って公企業と私企業の生産性格差の原因や公企業の行動と、公企業の民営化の効果を分析した。その結果、公企業が果たすべき役割を明らかにした。その成果の一部はEconomica及び、Journal of Economicsの2本の論文によって公表された。 さらに、LPガス及び自由化された都市ガス事業においては、その競争度が常に議論されてきた。従来都市ガス産業は、地域独占が認められ、その活動は事業法によって規制されてきた。これに対し、近年の大口市場の自由化にともない、地域独占の範囲が小さくなると同時に、規制の体系が事業法による事前規制から、独占禁止法による事後規制へと変わりつつある。この状況を分析するには、競争度及び独占禁止法の分析が不可欠である。本研究ではこの方面でも研究を進め、その成果が社会科学研究及び人工知能学会誌に掲載された論文によって公表された。
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