研究概要 |
論文"Real Indeterminacy of stationary Equilibria in Matching Models with Media of Exchange"(東京大学神谷和也氏との共著)を国際高等研究所研究会「多様性の起源と維持のメカニズム」および日本経済学会秋季大会(於明治大学)にて報告した.この論文では,既存の幾つかの貨幣の探索理論(search theory of money)モデルを包括する一般的モデルを分析し,価格水準・厚生水準が異なる無数の定常均衡が存在すること,すなわち「定常均衡の実物的非決定性」("Real Indeterminacy of Stationary Equilibria")が一般的に発生することを明らかにした.このことにより,従来の比較静学による金融政策の分析は,その分析対象としているモデルの特殊な仮定に依存しており,一般的な妥当性を欠くことも明らかになった. そこで,こうした新たな視点からの政策分析を行った.その具体的な成果が現在作成中の論文"Tax-Subsidy Schemes in Money Search Models"(東京大学神谷和也氏との共著)である.この論文では,ある種の所得再分配政策により,均衡の非決定性を解消し,さらに,次善の意味で最適な均衡を近似することが可能であることを明らかにした.より詳しい政策的分析が今後の課題の一つである. またこうした分析を踏まえて,論文『貨幣の探索理論の新展開』を作成・公刊した.この論文では,従来の貨幣の探索理論を概観しつつ,上の一般的結果を関連する幾つかのモデルに具体的に適用し,今後の貨幣の探索理論についての研究の方向性を展望した.
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