当該研究課題に関連する今年度の主な研究活動は1.福祉国家政策versus帝国主義政策の政治的競争理論;2.地球温暖化での世代間資源配分問題の研究;3.福祉国家政策の経済理論;4.負の公共財の結合生産を伴う生産経済における資源配分の効率性と公正性、以上の4点に整理される。1.については、政治的政策空間の次元が複数ある場合における2大政党制の下での政治的競争ゲームにおける、よりもっともらしい代替的な均衡概念として「政党内全員一致ナッシュ均衡」概念を応用して、具体的に所得再分配政策と軍事政策の2次元からなる政策空間での政治的競争ゲームを考察し、投票者の持つ軍事費支出に対するイデオロギーの存在ゆえに、多数派はより福祉国家的な所得再分配政策によって便益を得るにもかかわらず、ゲームの結果として提示される所得再分配はより帝国主義的なものとなる事を証明した。2.については、負の公共財を結合生産する技術からなる生産経済における資源配分の時間的流列を指定する資源配分ルールで、パレート効率性、衡平性、持続可能性の観点からなる基準を満たすものが存在するか否かについて検討し、無羨望的衡平性基準の場合には、パレート効率性、持続可能性との両立不可能性が生じてしまう事を証明した。現在、セカンドベスト配分ルールの可能性について、引き続き研究中である。3.については、ケインズ主義型と異なる福祉国家政策として主張される、ワークフェア、ベーシック・インカム、積極的労働政策などの諸政策を体現するルールを定式化し、その社会厚生上の経済パフォーマンスを評価する仕事を進めており、平成16年度の初頭に第一弾の成果が予定される。また、4.に関しては、所得格差が小さい社会の方がより環境悪化が進まないという左派系の政治的主張の妥当性を経済理論的に検証する作業を進め、基本的なモデルの設定と、分析手法の採用が確定した段階である。平成16年度には、何らかの成果が期待される。
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