研究概要 |
本年度は主に、個票開示リスク評価用超母集団モデルにおける小数法則と条件付けの意味を考察した。得られた知見は博士論文に一部結実した他、二本の査読付き雑誌論文を公表した。予感通り、任意の非負整数上の無限分解可能分布モデルに小数法則は適用可能である。これを切り口として、モデリングの方法論を明確に整理する事が出来た。 一般に各副集団の頻度が互いに独立に同一の非負整数上の分布に従うようなモデルで,平均的に寸法指標が対数凸ならば、頻度の分布は非負整数上の無限分解可能分布である事が判明した。経験的に寸法指標データは凸性を示すので、この結果は本プロジェクトの重要性を示すものである。なお非負整数上の分布の場合、無限分解可能分布と複合ポアソン分布は同値である。そして複合ポアソンモデルに小数法則を適用した極限分布は、複合ポアソン分布の複合された分布で規定される事が示された。複合ポアソン分布モデルでは、小数法則は総度数の分布を変えずに副集団の総数を増やす操作となる。そして総度数の分布を変えずに小数法則が適用出来るのは、複合ポアソンモデルに限られる。 この複合ポアソン分布族の中でのモデル選択が問題となるが、ある意味負の二項分布とポアソン・パスカル分布のモデルが重要となる事を示した。そしてこれらのモデルの性質を解析した。
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