本年度は計画の最終年度なので、成果発表に補助金を用いた。主な使途は、国際統計協会(ISI)の第55回大会での口頭発表(海外)である。口頭発表に重点を置いたので特に記すと、他に国内学会発表2件(応用統計学会、統計関連学会連合大会)、講演2件(応用統計ワークショップ(東京大学経済学部)、研究集会(東京大学工学部))で研究成果を述べた。加えて、下記のような理論的考察を行った。 各セルの度数が独立に複合ポアソン分布に従うとして、その総和を所与としたセル度数の条件付き同時分布を「条件付き複合ポアソン分布」と呼ぶ事にする。この分布は複合ポアソン分布のレヴィ測度(クラスター分布)を変えることで様々な種類が得られ、分布族をなす。そしてクラスター分布が一点分布に退化した場合に、条件付き複合ポアソン分布は多項分布になる。つまりこの分布族は多項分布に自然に拡張し、その望ましい性質を一部受け継ぐ。条件付き複合ポアソン分布の中でも解析的に扱い易い例が、多変量負の超幾何分布であり、擬似多項分布である。条件付き複合ポアソン分布を考える最大の利点は、度数の分散を大きく出来る事であり、過分散の記述に適する。またセル確率に相当する母数が全て等しい対称な場合は、本プロジェクトの主要成果である小数法則が適用可能となる。すなわち、極限分布として度数ゼロのセル数に依存しない便利なモデルが現れる。この極限分布は正の整数の確率分割を与えており、クラスター分布がべき級数分布の時、重み付きベル多項式の展開とみなせる。このように考えると、本プロジェクトの確率分割生成方法は、ギブス分割を生成する事が分かる。またコルチンモデルの特殊ケースで、取り扱いが容易な場合となっている。
|