研究概要 |
2003年度は本研究の初年度に当たり,特に分析データの選定及び利用手続きに関わる準備を主体として研究を進めた.具体的には,総務省統計局の行う「家計消費状況調査」に基づく分析を希望し,実際に目的外使用申請を経て,来年度早々に当該ミクロデータの分析が可能となる段階にまで到達することができた.なお,本申請は青山学院大学経済学部教授美添泰人,同助手,藤原丈史と共同で行っている. 本研究における分析の対象は「恒常的勤労所得の無い世帯」であるが,こうした世帯での消費構成は,相対的にいずれかの費目で抑制的傾向が観測されるものと予想される.しかしながら,家計調査や全国消費実態調査などを利用した荒木のこれまでの研究では,必ずしも顕著な特性が把握されていない.失業世帯では,蓄えの取り崩しによる下支え効果が,消費の経常的部分において観測されている可能性はある.とはいえ,恒常所得の無い世帯の消費全般が,就業世帯の消費構成の相似的縮小であり,しかも,縮小率はさほど大きくないとしては理解し難く,仮説として,一般に購入頻度の少ない高額な商品やサービスに関する消費状況に差異が認められるのではないかという見方を持つに至った.購入頻度の少ない財に関する消費実態を把握する場合,家計消費状況調査はまさにそれらを明らかにする目的で実施される調査であり,調査世帯数についても30,000世帯ほどもあり,失業・高齢など,種々の恒常所得の無い世帯類型について集計・分析が可能となる.次年度に向けて,具体的な再集計やモデル分析へと速やかに研究を進める準備を成し遂げることができた.
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