本年度は、「技術」「市場」「人材」の3要因がこう方向に働くことで韓国金型産業が日本にキャッチアップしたという仮説を実証的に検証することが目的であった。この点に関し、日本および韓国、中国などで金型企業、金型ユーザー、金型教育機関、金型関連組合、などを訪問し、聞き取り調査を行った。 技術:製造技術に関してはNCワイヤーカッティング機、EDM機、マシニングセンターなどの精度が1990年代に飛躍的に向上し、それまで職人に依存していた暗黙知的技能が機械に体化されたことが聞き取り調査からうかがえた。このことにより機械をうまく使いこなすことが出来れば高精度の加工が可能となった。また、これまで2次元図面の3次元展開が出来ず、金型製作上の大きなボトルネックとなっていた設計技術に関し、3次元CAD/CAMの登場により直感的に設計が可能となった。一方でこうした技術変化は操作する人材の訓練が必要であり、機械を導入しただけではうまく機能しないことが中国での聞き取り調査より明らかとなった。 市場:金型のメインユーザーである自動車、電気・電子産業の動向を調査した結果.韓国の金型産業の技術力が飛躍的に躍進した1990年代に、自動車、電気・電子産業の発展も著しいことが明らかとなった。こうした市場の成長と取引増加により、設備機器の導入の源泉となるだけでなく、顧客との双方向の学習が行われ、金型企業のノウハウが蓄積されたことが聞き取り調査よりうかがえた。 人材:韓国の金型教育機関での聞き取り調査および韓国金型企業への裏づけ調査を行った。新しい技術は訓練された人材がいなければうまく機能しないが、韓国では金型教育期間により訓練された人材が多く輩出され、韓国金型企業に多く送り込まれた。このことが韓国金型産業の発展に大きく寄与したことが、金型企業の側からも明らかとなった。 以上、「技術」「市場」「人材教育」の3つの要因により金型産業が発展するモデルを「韓国型金型産業発展モデル」と名づけた。
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