本年度は大きく以下の2点について考察をおこなった。第1は、わが国航空事業者間の合併・提携などに代表される協調的企業行動の現状分析である。まず、運航、座席販売、機材繰り、運賃設定などネットワークに関わる項目ならびに資本関係を中心にその内容を明らかにした。協調的企業行動は大きく2つに分類することができる。ひとつは、企業間結合の強化ならびにグループ内結束の強化につながるものである。JALとJASの合併、ANAとエアドウとの提携、便名の統一やFFPの共通化などマーケティング戦略上の取り組みなどが該当する。もうひとつは、子会社の活用と設立や路線の移管などを通じた企業グループ内における役割分担の再構築につながるものである。これら2つには経営効率化につながる側面と競争促進にマイナスに作用する要素があることを、理論的分析ならびに若干のケーススタディを通じ整理した。来年度においては、可能であれば航空会社にインタビューを実施し、意思決定プロセスなど実質的な経営支配にかかわる論点についても考察を試みたい。 第2は、わが国航空事業における競争性の変化についての計量分析である。企業間結合が進展し、規制緩和が実施されている状況では、独占力の強化が懸念されるところである。推測的変動ならびにパンツアロス統計量を推定し、わが国航空会社の旅客事業における競争性の計測を行った。完全競争ではないものの、かなり厳しい競争が展開されていること、航空会社間で独占度に違いがあり一部においてその度合いが強まる傾向にあること、以上の2点を暫定的な分析結果として導いた。来年度の早い時期に計量分析の結果をまとめる予定である。
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