本年は、所得分配が経済成長に影響を与え、複数均衡をもたらすという理論的論文、"Income Distribution and Multiple Equilibria"をまとめ、Hitotsubashi Journal of Economicsに掲載した。 つぎに、日本における出生率低下の要因として、子どものコストが高いことが考えられるのではないかということから、子どものコストを計測し、その出生率に与える影響を推定するという実証分析を行った。用いたデータは、家計経済研究所のパネルデータである。また、まもなく全国消費実態調査の個票データも用いて推定を行う予定である。 子どものコストとしては、等価尺度のRothbarth法を用いて推定したものと、同じく等価尺度の効用を直接計測する方法で推定したものを用いた。また、一ヶ月間の子どもに対する支出額も、別の子どもコストの指標として用いた。「子どもの質」を親は選べることから、子どものコストは内生変数であると考えられるため、操作変数推定法を用いて子どものコストが出生率に与える影響を推定したところ、統計的に有意に負の影響を与えることが明らかになった。操作変数にはさまざまなものが考えられるため、いろいろな組み合わせで推定して推定のRobustnessを示したり、操作変数が適切であるかに関してTestを行った。また、子どもの費用を補助する児童手当等が出生率に影響を与えると考えられるが、その影響に関するSimulationを行うことも計画している。
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