この研究では最近の日本における取締役改革と経営者のインセンティブの関係を分析することが目的である。特に、取締役改革が実際にどのように行われているのか、またどのような会社がこのような改革を行っているのか、経営者はどのようなインセンティブをもってこのような改革を行っているのかを分析している。平成15年には、まず、上場企業を中心に、さまざまな企業のコーポレートガバナンスに関する情報を収集することを中心に行った。特に、ここでは経営者のインセンティブに関する情報を収集した。経営者のインセンティブについては電子的なデータベースでは入手不可能なものもあるため、過去の有価証券をあたって、必要な情報を収集しデータとして整理を行った。 また、実際に経営者のインセンティブを分析するために、企業の業績と役員報酬との関係のデータを整理し、簡単な分析を開始している。具体的には、業績の変化に対しての役員報酬の感応度を計測を行った。すなわち、企業価値を上昇させた経営者は、どのくらいの額の報酬をそれによって得ているのか、という分析である。この関係の計測に関しては、パネルデータ分析、ロバスト回帰などさまざまな手法を用いている。また、時系列的な変化を追うため過去にさかのぼってデータを構築することも継続中である。 役員報酬の研究の問題点として、日本においては最高経営責任者の報酬額が公表されていないということが指摘されている。そこで、取締役会の構成およびその他の情報から、最高経営責任者の報酬を推定した。このことにより、最高経営責任者のインセンティブをより正確に把握できること、諸外国との研究との直接的な比較が可能となった。
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