本年は入力したデータを用いた分析を進め、論文を執筆し、2004年3月刊行のJapanese Economic Reviewに"The Multi-Sector Business Cycle Model and Aggregate Shocks : An Empirical Analysis"を掲載した。この論文により、日本の景気循環を独立な産業固有効果とマクロ効果に分離した場合、後者の割合は先行研究に比べ大きく、また安定していること、および80年代後半のバブル期にマクロ効果の割合が大きいことが明らかになった。また、マイクロデータを用いた研究も同時に進めており、アジア諸国の企業データを用いたマクロショックとマイクロショックの分析、および企業行動に関する分析を準め、その成果を寺西重郎編『アジアのソーシャルセーフティネット』に掲載した。この分析では、通貨危機の効果がアジア各国内で、一様ではなく、通貨危機時に企業の売り上げや雇用の変化の分散が高まっていること、すなわち通貨危機は単なるマクロ的現象ではなく、産業、あるいは企業レベルで異なる影響があったことが判明した。さらに、日本企業の経営効率性とその背後にあるメカニズムに関して二本の論文を執筆し、そのうちの一本を2004年1月刊行の『経済研究』に掲載した。この経営効率性に関する研究によると、現在の日本の上場企業で進んでいる社外取締役の増加は、かならずしも企業経営効率の改善につながるとは限らず、従来の内部出身者主体の企業経営システムの可能性も否定できないことになる。
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