研究概要 |
企業組織内における財務・投資などの様々な意思決定と,社債市場との連関を経済学・経営学の両側面から明らかにすることが本研究の一貫した目的である.今年度は3年計画の中間の年度として,特定の産業と社債市場との関わり合いを探るという実証的な課題に取り組んだ.交付申請書の研究計画書に基づき,幾つかの規模の大きな経営破綻が相次いでおり,資本市場から調達できる資金の制約を特に受けていることが推測され,かつ個人向けの普通社債を初めて大規模なデフォルトに陥らせ,個人投資家の資本市場に対する信頼性を大きく損なった流通業を取り上げた.その上で,資本市場からコスト面での様々な制約がかかると,それは具体的な投資計画,例えば小売店の出店行動にどの様な影響を与えるかを計量的に測定した.流通業にはこれまで利用することの無かった社債市場を積極的に活用し,投資計画に生かしている企業も存在する,見方を変えれば,従来流通の諸問題は経営学の立場から論じられることが多かったが,経済学の視点からも含意を得ることができたという点で極めて意義のあるものであった. なお以上の研究成果は,査読付き国際学術雑誌The Japanese Economyに論文を掲載し,またこれと併せて香港で開催された国際学会9th Convention of the East Asian Economic Associationにおける報告も行い,Proceedingsに収められた.また国内の査読付き学術雑誌『マーケティング・サイエンス』にも掲載された.これは公式的には平成15年発行であるが,実質的には平成16年の発刊となった, 最終年度である次年度には,以上の研究成果をベースとして本研究の総括を行い,企業組織よりはむしろ社債市場の構造そのものに焦点を当てた研究の国際学会での報告,国際学術誌への投稿を行う.
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