公企業と私企業が同じ市場で競争する状況(混合寡占市場)を、製品差別化・特化を考慮した理論モデルを用いて分析することを主な目的として研究を行った。 この目的と直接つながる研究として、Economica誌に掲載が決まった論文がある。この論文では、ホテリングモデルを用いて製品差別化を表現し、公企業と私企業が選択する製品差別化戦略の問題を、費用削減投資の効果も考慮して分析した。これにより、公企業の非効率性が内生的に発生する状況を扱える。この結果、公企業の方がより差別化された製品を供給することが示された。また、私企業に比べて公企業は非効率的になることも示された。この費用格差が大きくなる場合、民営化をした方が社会全体にとって望ましいことも示された。この結果は、日本における住宅金融公庫やエネルギー産業などの動きと整合性がある。一方で、米国の郵便サービスとはあまり整合性が無く、この点は今後の課題となっている。 Matsushima and Matsumura(2003)で扱った混合寡占市場における製品特化戦略の分析を拡張し、外国企業の参入効果を分析した。この結果、外国企業の特化する分野はそれぞれ異なるが、国内私企業の特化戦略は、高々2つに集中することが示された。これは、外国企業の参入が起こっても、国内に公企業が存在する場合、特化戦略に関しては横並びが残ることを意味している。この論文は現在投稿中。 ホテリングモデルと同様に、製品差別化を表現する時に用いられるSalop(1979)による円環モデルを用い、企業がある確率分布に依存して立地を決定する状況(混合戦略均衡を考慮した状況)を分析した。分析の初期段階であるため、私企業だけが存在する状況を扱った。ホテリングモデルにおける結果と異なり、混合戦略均衡のパターンは、ある種の対称性をもつことが示された。この論文はRSUE誌に掲載される。
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