研究概要 |
本年度は,情報の非対称性に基づくインセンティブ問題に対処するための組織的・制度的枠組みの設計に関する理論的研究を行った.また,その理論的結果から得られる示唆として,行政組織や規制の枠組み(公共事業の入札)がどのように設計されるべきかといった問題を考察した.得られた研究結果は以下のとおりである. 第一に,同じ入札者間で繰り返し入札が行われるような入札環境を分析して,入札者間で発生する談合を防ぐための効率的な調達スキームの設計について理論的な結論を導いた.同研究結果は,大阪大学社会経済研究所の定例研究会にて報告された.第二に,モラルハザード問題が生じる一般的な組織環境において,組織構成員間の行動に外部性が働き,かつ組織構成員が十分多いような場合には,モラルハザードによる厚生損失は近似的に最小化されうることが示された.従って,多くの生産活動をまとめて大規模組織を構成することには,組織内のエージェンシー問題を解決するうえで重要な役割を果たすことが示唆された.同研究結果は,東京大学Microeconomics Workshopにて報告された.第三に,情報の非対称性下の取引において,取引当事者間での交渉力の配分が取引の効率性に異なる影響をもたらすかどうかについて理論的な検討を行った.同研究成果ば学術雑誌Economics Lettersに掲載された.
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