国際化において、労働移動は、貿易、資本に次いで、第三の波といわれており、送出国と受入国双方に与える経済的なインパクトを無視できない時代にきている。しかし、現在、国際労働移動研究は、送出し国が受入国かという片側の観点からの分析が主流であるので、ボーダーレス経済に対する総合(相互)的効果が明らかではない。したがって、本研究は、送出し国(フィリピン)の立場から見た労働輸出と経済発展の関りを中心に実証的研究に加えて、フィリピン労働者の受入先の労働市場・産業についての分析も行う試みである。 研究の進行状況:研究期間の前半では、まず、フィリピンの海外出稼ぎ労働者についての現状を調べた。つまり、現段階では、公表・非公表データを収集し、それを用いて、どんなフィリピン人が海外に働きに行くのか、つまり、年齢、性別、職業、教育、送り先によるselectivity(選別)問題に取り込むとともに、そのフィリピン国内労働市場の関係を考察している。その結果、フィリピン人海外労働者のほとんどは契約型で単純・未熟労働者であり、また、アジア(特に中東)が主な行き先であることが判った。この事実は言うまでも無く、フィリピンやその送り先の経済に大きな影響を与えると考えています。次に、フィリピン人海外労働者の国内への送金額は何によって決まるのかを実態調査のデータを用いて調べる。受け入れ先の実態調査を来年度に行う予定なので、韓国・日本・アメリカを訪問し、実態調査の実施の可能性を確かめ、実態調査のアンケートを作成・プレーテストを行った。
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