研究課題
1.東アジアにおける為替政策協調や共通通貨制度が域内のマクロ経済安定にとって望ましいかを検討するために、電気・電子関連製品の国際市場における需給ショックが東アジア諸国の輸出や生産に与える影響を再検討した。その結果、一般に円ドルレートの変動がアジア諸国の輸出・生産に与える影響と考えられているもののかなりの部分が電気・電子関連市場の実質ショックに起因していること、国によってその影響の大きさにかなりのばらつきがあること、近年では中国の産業発展に伴ってその波及効果にも変化が生じていることが明らかになった。このことは、円ドルレートの変動のみを域内経済の不安定化要因とみなす議論がバランスを欠いていること、国際的な為替政策強調が不可避的にもたらす国内金融財政政策の自由度の制限にも十分な注意が払う必要があることを示唆している。2.東アジアにおける通貨同盟と自由貿易協定の意義を包括的に議論する足がかりとして、域内諸国が貿易を通じて実質的にどれだけ海外部門全体や域内の他の国々に依存しているかを検討した。その一貫として輸出入の総額ベースで計算される通常の貿易依存度を修正した新たな貿易依存度指数を開発し、為替変動が国内輸出部門と輸入競争部門の雇用や所得に与える影響を計測した。試算可能な世界44力国についてこれらの指数を計算し、さらに東アジア諸国とEU諸国の比較も行った。その結果、通念とは異なり、東アジア諸国の(実質的)貿易依存度はEU諸国のそれと比べて必ずしも高くないことが示された。3.通貨同盟や自由貿易協定の費用・便益関係の決定要因としては、域内の貿易・投資の絶対額の多寡に加え、加盟国の産業構造の類似性と相互の市場への参入余地の大きさも重要と考えられている。過去20年間に東アジアの域内貿易は爆発的に増加し、近年では中国と他の国々との貿易の増加が著しい。これらの域内貿易の増加が当該国間の実質的な産業(輸出)競合度をどの程度高めているかを計測するために、詳細な財別・国別輸出入統計を利用した新しい貿易競合度指数を考案し、アジア10カ国を対象に過去15年間に遡ってその値を試算した。その結果、一般には東アジアの域内貿易は多国籍企業の国際生産ネットワークの広がりを反映した相互補完的なものと考えられがちであるものの、実質的な産業・輸出競合度も高まっていることが確認された。また、得られた指数を用いた域内諸国通貨の実効為替レート指数も作成し、人民元の対ドルレート見直しが他の国々の輸出競争力に与えうる影響なども検討した。
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Journal of the Asia Pacific Economy 10(1)
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経済学雑誌(大阪市立大学経済学会) 105(4)(近刊)
Exchange Rate Regimes in Developing Countries. IDE-JETRO (Chapter 2 of H.Mitsuo(ed.))
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New Developments of the Exchange Rate Regimes in Developing Countries. IDE-JETRO (In H.Mitsuo(ed.)) (近刊)