研究概要 |
1.分析対象の汚染のタイプを決定した。各国の環境汚染と貿易の現状を知るために研究費補助金で購入した図書・資料等を基に検討した結果、重要かつ今まで分析がほとんど行われていないタイプの汚染に焦点を当てることにした。具体的には、ある産業から発生した汚染が、他の産業の生産性に悪影響を与えるタイプの汚染である。これは今日、急激な経済発展を遂げるアジア諸国において、特に重要なタイプの汚染である。工業部門から発生する温暖化ガスなどが異常気象を引き起こし、農業部門の生産性に悪影響を与えているのではないかと危惧されているからである。これらの国の多くは発展途上国であり、環境技術援助を考察する上で適切な分析対象である。 2.越境汚染と貿易の基本モデルを構築した。生産部門に影響を与える汚染をモデル化した先駆的な論文(Copeland and Taylor,1999)を参考に、より一般的なモデルを構築した。彼らのモデルには、貿易後に国が完全特化する特徴がある。そのため、次の問題点がある。対外援助(トランスファー)問題の分析の際に重要な交易条件効果は、通常、貿易パターンや貿易量に依存する。そのため、完全特化するモデルで得られた結論は一般的でない可能性がある。本研究にとって適切な不完全特化する理論モデルを構築した。 3.具体的な成果として、以下の論文を作成中である。 (1)Gains from trade and the Environment in a Small Open Economy 主な結果:第一に、生産の外部性がある下で貿易は必ずしも小国にとって望ましくない。第二に、課税によって厚生が改善し得る。第三に、環境技術援助の効果を明らかにした。 (2)Welfare Effects of International Income Transfers under Transboundary Pollution 主な結果:国際的な所得移転(トランスファー)は、ある条件の下で、援助供与国と受入国双方の厚生を上げる。
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