今年度の研究は、ロシアの学卒労働市場の中でも、特に、大学新卒者の就職問題について、研究を進めた。昨年度においても着目した「就職指令書」が、旧ソ連時代の国家的学卒者配分制度からの遺制と現在にも残り、強制的・指令的な性格を無くし、新たに大学を通じた就職として機能している現状を、ロシアの大学の関連部局職員および公共職業安定機関の専門家などからのヒヤリング調査を通じて、明らかにする作業を行った。その成果は、Far Eastern Studies誌において、近く発表予定である(3月発行)。この研究成果は、フィンランド・トゥルク市において8月に開催された国際学術会議「New Europe 2020:Visions and Strategies for Wider Europe」においても発表し、評価を得た。 また、本研究課題のもうひとつの重要な課題として、公共職業安定機関において利用されている職業分類に関する研究を進めた。ロシアには、2つの職業分類が存在し、特に共職業安定機関において利用されている職業分類は、旧ソ連時代に作成された分類構造・分類の発想をそのまま現在においても利用している。我が国や欧米諸国の利用する職業分類に比べ、極端に分類職数が多いこのロシアの職業分類は、公共職業安定政策の非効率を生み出すだけでなく、それを利用する企業の労働組織や労務管理においても、障害になる可能性が高い。この研究は、さらなる調査を必要としているが、暫定的な研究成果をサンクトペテルブルク国立大学経済学部における国際シンポジウム「АктуаΛьные пробΛемы зкономической науки и хозяйственной практика」(2004年4月)において発表し、また、同内容の論文は、中国吉林大学の学術雑誌『東北亜論壇』に中国語に翻訳され、掲載された。
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