先進国ではプロパテント政策を積極的に推進しでいる。特許権や研究開発を推進することは新市場、新産業の育成につながり、雇用創出が期待されている。本研究では特許のような新技術の開発による雇用創出効果の有無を実証分析してきた。結果をまとめると (1)内生性を考慮しない場合、特許や研究開発は雇用に正の相関があるように見える。 (2)内生性を考慮しないモデルでは実際に登録された特許が使用されているかいないかに関係なく、特許取得活動が活発であれば雇用創出効果があるように見える。 (3)しかし、内生性を考慮すると実は結果は見せかけである可能性が高いことがわかった。 (4)特許取得活動と雇用創出の経路を検証すると、研究開発費の投入や研究開発部門の人員強化は特許取得に貢献し、その結果付加価値の上昇につながるようである。しかし付加価値が上昇することによる雇用への波及効果はない可能性があることがわかった。 今後の課題として幾つかの問題が残された、第一に7年間、22産業のパネルデータはサンプル数が少ないため、今回の結果に関しては注意が必要である。第二に企業レベルで分析をする必要がある。同一産業で特許を取得するかどうかで差が既に存在するため、企業レベルの分析が不可欠である。企業レベルでの分析は技術革新と雇用創出、雇用喪失の効果を見ることも可能になる。さらに、企業レベルで分析することによって、90年代の特許法改正の影響があったのか統計的に分析する必要がある。第三に、特許取得活動と雇用創出の経路の分析では注意が必要である。モデルの特定化が正しいシステム推定を実施することにより、特許取得活動が業績さらには雇用へどう影響するか明確な政策インプリケーションが導き出されるであろう。今後はこれらの点を改善していきたい。
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