研究概要 |
近年,インターネット・通信衛星・携帯電話などのコミュニケーションネットワークを通じた情報の伝達が,財・サービス貿易に与える影響は非常に重要なものとなっている。本研究の初年度に当たる平成15年度は,コミュニケーションネットワークと国際貿易の関連性について,不完全競争下の国際貿易モデルを利用した独自のモデル構築を試み,数多くの国際学会において英語報告を行った。そうした中で,ネットワークを含んだ貿易モデルにおける貿易利益について論文"On the Distribution of Trade Gains in Models of Intra-industry Trade"がprogress in Economics Research誌に掲載される運びとなった。また,本年度は,ネットワークを取り入れた貿易理論の創始者である。Richard Harris教授をカナダのサイモンフレーザー大学に訪ね,適切なネットワーク部門のモデル化についてディスカッションを行った。そこでの研究の成果は,Asia-Pacific Economic Associationの機関誌であるJournal of Economic Research誌にOn the Interconnection of Networks and Gains from Trade in Business Services″として掲載された。 この他にも,ネットワークと国際貿易についての概説論文を「コミュニケーションネットワークと国際貿易」として『経済学の進路』(慶応義塾大学出版会)上に公表する予定である。次年度は,Harris教授との議論から得られたアイディアをさらにモデル化し,再度教授とディスカッションを行う予定である。また,同時にネットワーク貿易モデルを用いた実証研究も開始する予定である。以上の議論は,静学的フレームワークに基づいたものであるが,本研究者は,現在コミュニケーションネットワークを導入した動学的貿易モデルの構築可能性を探っており,多くの論文を執筆中である。
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