平成15年度においては、投資環境が多国籍企業の投資活動に及ぼす影響の分析を中心に行った。理論と過去の研究を参考に実証モデルを構築した上で、直接投資に関する資料収集のため、世界銀行が発行するGlobal Development Finance CDROM、及び東南アジアと他の開発途上地域政府における被投資国政府が公表する資料によりデータを入手した。また、分析に必要な経済・社会指標を世界銀行のWorld Development Indicatorsから入手し、投資環境に関する政策・制度の指標を作成するにあたり、世界銀行のCountry Policy and Institutional Assessment (略してCPIA)及びInternational Country Risk Guide (ICRG)をそれぞれ統計分析に適合するよう加工した。開発途上国30カ国に関する1980〜2001年にわたるこれらデータに基づいて実証分析を行った結果、開発途上国全体にとって、自国の投資環境が新たな直接投資を誘致する上で非常に重要であることが検証された。また、経済リスクの要因が投資環境を決定する最も重要な要因であることがわかったが、近年政治リスクを管理・軽減することの重要性が高まっていることも判明した。さらに、東南アジア諸国にとって、中国という最大の投資誘致国との競争的共存を達成するためには、制度改革のより一層の推進が必要となっている。
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