平成16年度においては、投資環境が多国籍企業の投資活動に及ぼす影響の分析について論文をまとめ、学会発表を行なった。前年度に引き続き、直接投資に関する資料収集を、世界銀行が発行するGlobal Development Finance CDROM、及び東南アジアと他の開発途上地域政府における被投資国政府が公表する資料より収集し、経済・社会指標を、世界銀行のWorld Development Indicatorsから入手した。また、International Country Risk Guide(ICRG)及び世界銀行のCountry Policy and Institutional Assessmentに基いて、投資環境に関する政策・制度の統計指標を作成した。理論と過去の研究を参考に構築した実証モデルによって、開発途上国30カ国について1980〜2003年の期間にわたるこれらデータを分析した結果、開発途上国全体にとって、自国の投資環境が新たな直接投資を誘致する上で非常に重要であることが検証された。また、前年に行なった分析から政治リスクの重要性が明らかになっていたため、政治リスクの内容をさらに分析したところ、投資に関する法・制度の整備や安定的政治システムなどが投資の決定要因として非常に重要であることが判明した。また、東南アジア諸国は、このような制度改革を推進することによって、多大な追加的投資を得られると推計された。
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