今年度は、1の論文を完成させるとともに、来年度の研究のために日本の企業レベルのデータを収集することに努めた。以下、それぞれの実績について簡単に述べる。 1.日本からの外国直接投資に付随する研究開発活動の決定要因を分析する一環として、技術後進国がどのような手段で先進国の技術を導入するかについて、理論的・実証的に考察し、"Technology Adoption in Follower Countries : With or Without Local R&D Activities?"と題する論文にまとめ、国際学術雑誌に投稿中である。理論的な結論は、技術後進国は、高等教育を受けた労働者が多く初期の技術レベルが十分に高ければ、自国内での研究開発活動(多国籍企業の研究開発活動を含む)を利用して技術導入を行うが、そうでない場合には自国内で研究活動を行わない多国籍企業によって技術を導入する、というものである。この結論を国別のデータを使って検証したところ、概ね支持された。また、この理論的なアイデアは、今年度に行った中国・タイ・マレーシアの日系企業の聞き取り調査によって得られたことを付記しておきたい。 2.日本における研究開発活動の空洞化の実態を分析するために、企業レベルのデータベースを構築する必要がある。本研究では、もともとはアンケート調査によるデータベース構築を予定していたが、アンケート調査では十分なサンプルが得られない可能性があることを鑑み、経済産業省が毎年行っている「企業活動基本調査」(国内の企業レベルのデータベース)と「海外事業活動基本調査」(日本企業の海外子会社ごとのデータベース)とをマッチさせることで、必要なデータベースを構築することとした。現在、経済産業省にデータの使用について依頼中であり、2004年3月には入手の予定である。
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