産業集積は、もともと研究対象としてきた経済地理学や地域科学のみならず広く社会科学の研究者に関心をもたれるようになった。昨年度に引きつづき、様々な視点からの国内外での研究についてレビューを行いつつ、グローバルな空間的分業が形成されるもとで産業集積が再編しつつも意義を高めていることについて、説得力のある枠組みから解明を目指した。 具体的な第一の課題である日本的生産システムと産業集積との関わりについては、生産規模、取引関係、取引以外の企業間関係、地域労働市場を含めた分析を行い、カナダの大学出版会から出版される単行本に所収される論文として提出し、編者・出版社・外部レフリーのコメントを待っている。2月末からのアメリカ合衆国への調査では、ある種孤立した西海岸での自動車生産とそれゆえの合衆国中西部、カナダ、メキシコとの分業について知見を得た。昨年度までのカナダにおける調査を、3月末の日本地理学会にて「生産規模、製品品質と地域的生産システム」として、高品質製品の生産開始に伴う変化を報告する。関係性資産や関係特殊技能という観点から、日米の自動車産業集積を比較した共著論文を英文で作成中である。 第二の課題である大都市圏経済と産業集積との関わりについては、研究代表者によるこれまでの研究を、産業集積と大都市圏経済に関する著書としてまとめつつある。日本の学会誌『人文地理』の英文特集号の企画担当者となり初の英文特集号を刊行した。またコンピュータ・グラフィック産業の集積について共著論文を同誌に投稿し修正中である。アメリカ合衆国の学会誌への東大阪の中小企業集積に関する共著論文は、少し方向性を見直し再投稿に向け論文を修正中である。
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