本研究の目的は、人口減少下の経済において、セーフティ・ネットとして生涯生活権を保障するベーシック・インカムがどの程度必要なのかを明らかにすることである。先行研究等の文献解題、綿密なデータ収集、構造方程式の推定を中心とする実証分析、そしてそれを踏まえた比較制度分析により、具体的な政策効果の検証と政策提言にいたる統一した研究を行っており、本年度は、以下の3つを課題として研究を行った。 第1に、既存研究のサーベイである。日本大学人口研究所モデル等の計量モデル分析、社会保障・人口問題研究所、総務省の人口予測(推計)モデル、人口減少が経済・社会に及ぼす影響、ベーシック・インカムの経済学的分析・研究について、従来の研究動向及びその成果を把握した。 第2に、人口予測(推計)モデルの開発・精緻化である。前年度まで、推計を行うためのデータセットの整備に重点を置いて研究を行ってきた。本年度は、そのデータセットをもとにして、計量経済学的手法を用いて、市町村別に推計する手法を開発していくとともに、さらに推計の信頼性の向上・精緻化を行った。 第3に、生涯にわたるベーシック・インカムの理論的・実証的研究である。本年度は、国内外の既存研究のサーベイに重点を置いた。
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