復帰以来30年間、沖縄県の開発は、時限立法である「沖縄振興開発特別措置法に基づいて進められてきた。平成14年度から「沖縄振興特別措置法」に基づく新しい地域開発の枠組みの中で進められるようになった。本年度は、このような新しい沖縄振興計画の枠組みの中で、どの様に国家財政資金が沖縄に交付されているのかその構造を明らかにすることができた。とりわけ、基地所在市町村の典型事例として、沖縄本島北部の名護市の財政調査をおこなった。その結果、名護市財政は、国家から地方交付税、国庫支出金などの通常の国家財政資金に加え、島田懇談会事業、軍用地代収入、その他の基地周辺対策事業費が国から支出されており、基地関連収入が歳入の3割近くを占めるに至っている。 こうした基地所在市町村の財政調査の結果、新たな沖縄振興の枠組みによる地域開発が進められる一方で、基地関連の国家財政支出が地域経済の原動力となっている地域が依然として存在し、更に、基地関連の財政資金への過度ともいえる依存状況にあり、その依存度を強めている地域も存在するという実態が明らかとなった。 こうした財政政策の結果、依然として沖縄経済が財政依存度を高めていること、公共事業や基地経済に依存する脆弱な経済構造であることなどが明らかとなった。ごうした脆弱な経済構造を維持可能な環境保全型地域経済に転換を図るための財政政策の理論的基礎を確立するための研究の必要性が一層明らかとなった。 環境保全型経済創造を目指す財政政策を研究するなかで、現代的「公共性」を再定義することが必要であるばかりか、公共政策を考える上で、「平等」に関する理論的研究の成果をふまえた財政政策論を構築する必要性も明らかとなった。 また、GIS(地理情報システム)を活用した地域経済の特性の分析を試み、地域経済・財政の状況を重層的に把握する手法の確立に向けた研究も進めた。
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