平成15年度に引き続き、平成16年度も沖縄県の財政依存経済の実態調査を継続的に行った。とりわけ16年度の重点的な実態調査の課題として、(1)三位一体の地方財政改革が沖縄県下の地方自治体財政に与えた影響、その地域経済への影響、(2)離島地域の自治体財政の構造分析を中心に調査研究を行った。また、維持可能な環境保全型経済の創造するための財政政策を研究するために、成長管理政策で大きな成果を挙げている米国コロラド州ボルダー市の財政政策・環境政策の現地調査を行った。このボルダー市調査から環境再生と公共支出の効率化のモデルとして経済的手法による環境政策が有効であることが明らかとなった。 三位一体の地方財政改革が、脆弱な沖縄県の地方自治体財政に深刻な影響を与えていることが明らかになった。一方で、基地政策と密接に関連した国庫補助金は財政改革の影響が少なく、改革の影響が公共政策の分野により「非対称」であることも同時に明らかとなった。今後の研究課題として、「基地関連補助金」と「住民の生存などに関わる補助金」など公共政策のカテゴリーに分けて三位一体の財政改革の影響がどの様に出ているのか比較研究する必要がある。 離島自治体財政の構造分析を行うために、租税負担の現状と所得分配の構造と比較検討する方法で自治体財政の構造分析を行った。こうした分析の結果、沖縄県の離島自治体における租税負担構造は、本土の租税負担構造と比べて、国税の負担比率が低く、きわめて特異な租税負担構造になっていることが明らかとなった。こうした租税負担構造は、沖縄県の離島経済が特異な経済構造をしていることを示すものであり、環境保全型経済の創造をめざす財政政策モデルを考察する上で有益な知見を得た。財政依存経済の典型である公共事業依存型の経済である離島自治体の経済構造の改革なくして、自治体財政の再構築も不可能であることが明らかとなった。
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