研究概要 |
沖縄復帰後の沖縄振興開発政策および基地所在市町村財政の調査研究を行い、沖縄が財政依存型経済に立ち至った原因として、(1)沖縄振興政策の枠組みが公共事業偏重型財政運営を可能とするものであったこと、(2)米軍基地所在市町村に対する財政援助的補助金や米軍基地の移設に関わる北部振興策の補助金など大量の国家財政資金が局地的に流れ込み、公共事業の量を拡大していることなど国家の財政政策が大きな要因であることが明らかとなった。 川瀬光義氏(静岡県立大学)との共同論文‘Fiscal Policy to Maintain U.S. Military Bases in Okinawa Prefecture, Japan'を第61回国際財政学会(韓国・済州島)で発表した。この論文では、沖縄県が受け取る軍用地料が、沖縄県の第1次産業の生産額を超えるなど基地を維持するための国庫補助金が地域経済をゆがめている実態を明らかにし、沖縄における基地関連の財政支出の実態を明らかにした。 こうした研究の結果、沖縄振興政策は、我が国における過疎地や離島など条件不利地域への地域振興策に共通する欠陥を有していること、そうした欠陥故に基地所在市町村への財政援助的補助金に安易に依存する自治体財政運営が広がっていることなどが明らかとなった。沖振法の高率補助金による公共事業偏重型の財政運営が、必ずしも自立的な経済の形成に役立っていないことが明らかとなった。また、沖縄特例の嵩上げが公共事業に偏っていたために、三位一体の地方財政改革の影響が、地方案に比べると小さかったことが明らかとなった。三位一体の地方財政改革について、地方分権を強化するものとして46都道府県が要求する改革プラントと沖縄県の利害が対立することが明らかとなった。維持可能な地域経済を創る財政政策として、EU構造基金型の補助金政策への転換や地方交付税交付金の充実が求められる。
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