本研究では、ミクロ的基礎付けのある理論的モデルを用いて、金融取引に付随する流動性リスクがどのようにしてシステミックリスクに発展するかという問題を分析し、システミックリスクの発生と拡散を抑制する最適な金融規制の有効性に関する考察を行っている。 研究期間(計3年)の1年目にあたる平成15年度は、主として当研究に必要となる先行文献の収集および整理を行った。システミックリスクを考える際、部分準備制度の下での銀行システムの脆弱性が前提となるため、銀行組織に関する基礎研究をフォローしておく必要がある。そこで、本研究では、不確実性、情報の非対称性、および契約の不完備性という3つの視点から先行文献の再整理を行い、その成果を論文1で発表した。 さらに、Rochet and Tirole(1996)による銀行間(インターバンク)市場モニタリングのモデルを用いて、1銀行で生じた流動性不足が他の銀行の債務履行能力に波及する程度の大きさと、パラメータ化した流動性ショックの実現値との関係を導出し、Goodhart(1995)が提唱しているLLR(最後の貸手機能)を実行する際の基準について考察した。この成果は、論文2で発表した。
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