研究概要 |
平成16年度は,当初計画された研究の中で,現実のオプション価格からブラックショールズ公式をもとに計算されたインプライド・ボラティリティが,原資産価格と乖離の大きい権利行使価格では大きくなるという現象(ボラティリティスマイル)に関する研究を進めた。オプション評価に用いられるブラックショールズ公式の前提条件は,原資産価格が幾何ブラウン運動過程に従うことである。ところが,多くの実証研究でこの前提が満たされないことが示され,本研究の原資産である日経平均株価は,幾何ブラウン運動過程より裾の厚いGARCH過程にしたがっている可能性が高いことが確認されている。最近の標本期間について,日経平均株価がGARCH過程に従っているかどうか検証したところ,GARCHを支持する結果が得られた。これらの推定されたパラメーターを用いて,原資産価格がGARCH過程に従っている事を前提とし日経平均のオプション価格を求め,この価格からインプライド・ボラティリティを再計算したところ,ブラックショールズ公式を前提とした場合よりボラティリティスマイルが改善されることが確認された。このことは,日経平均が従う確率過程を誤って特定化することでオプション価格にミスプライスが生じていたことを示している。 しかしながら,株価の確率過程をGARCHに変更したとしても,ボラティリティスマイルは完全に解消されず,他の要因が影響していることが確認された。他の要因として考えられるものとしては,市場のミクロ構造の影響である。オプション市場のミクロ構造を考慮した上で,ボラティリティスマイルを考えていうことが今後の重要な課題である。
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