研究概要 |
大阪証券取引所(大証)およびシンガポール取引所(SGX)に上場されている日経225先物のティックデータから1分間隔の取引回数データを作成し,そのモデル化と両取引所の関連性についての検証を行った. 両市場において,日経225先物の取引回数には日中季節性が存在し,大証では取引の開始時刻直後と終了時刻直前に取引が活発化する,いわゆるU字型の日中季節性が午前の取引時間と午後の取引時間に見られることが明らかになった.これに対しSGXでは,取引開始時刻の直後や取引終了時刻の直前に取引が活発化するのではなく,大証の取引開始,取引終了時刻直前に取引回数が多くなることが示された.ただし,午前の取引開始時刻だけは例外で,大証での取引が行われていなくても取引が活発であることが分かった.また,大証の取引時間帯については,大証もSGXもほぼ同じ日中季節性を示すことが明らかになった. 日中季節性を除去したデータについてMultiplicative Error Model(MEM)を推定した結果,両取引所において,取引回数の条件付き平均は過去の条件付き平均に大きく依存することが示され,単位時間あたり取引回数のモデル化にMEMが有効であることが示された. さらに,MEMの条件付き平均式に,他取引所の1期前の取引回数,今期の取引回数を導入して推定を行った結果,他取引所の1期前の取引回数は今期の条件付き平均にほとんど影響を与えないのに対し,今期の他取引所の取引回数は今期の条件付き平均に影響を与えることが示された.しかし,過去の条件付き平均の影響を打ち消すほど大きな影響を及ぼすものではない.この結果から、大証,SGXで取引される日経225先物は,共通の情報によって取引される一方,各市場で生じる固有の情報によって取引されていることを示唆している.
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