本研究の計画では、1970年代から1990年代にかけてのアメリカの投資信託と金融市場の発展の関連性に着目しながら、アメリカ金融制度の形成および変遷過程を議会資料の分析を通じて行うというものであった。 平成15年度の研究においては、まず、1970年代から1990年代の投資信託の発展の全体的な概況を把握し、そのための議会資料整理とデータ解析を行った。特に、今回の分析で、1990年代のアメリカ金融市場と投資信託の発展に着目し、以下のような分析結果を得ることができた(「アメリカ金融市場の発展と投資信託システム」『名城論叢』第4巻第2号、2003年11月)。 (1)1990年代のアメリカ金融市場では、投資家とのインターフェイスの部分でのサービスの強化が図られ、一般の貯蓄性資金が投資信託システムに流入しやすい環境の整備が進んでいた。 (2)この投資信託への資金集中は、アメリカ金融システムの制度的条件が大きな影響を与えており、1990年代の証券規制構造の変化と、商業銀行や投資銀行などの金融業の変化と密接に結びついていた。 (3)この時期の投資信託には、「ファンド・ファミリー」と呼ばれる構造があり、これが多様な投資信託の販売を通じて、1つの投資信託グループ内に投資資金を吸収・滞留させるメカニズムを形成し、当時のアメリカ金融市場の安定化に重要な役割を果たしていた。 なお、上記の金融システムの安定化要因としての投資信託システムの形成は、1940年代以降の長期にわたって形成されてきたものであり、今後、さらに、1970年代と1980年代の議会資料等の分析を通じて、投資信託の構造を詳細に明らかにしていくことを予定している。
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