平成16年度の研究においては、平成15年度に開始したアメリカ議会資料の調査を継続しながら、1970年代から1980年代にかけてのアメリカ金融市場と投資信託の発展過程についての分析を行った。また、2000年以降の投資信託の企業統治(コーポレート・ガバナンス)や手数料に関する様々な問題点が議会で取り上げられたこともあり、それに関する調査も同時に行った。 また、今回は、平成17年2月28日から3月14日にかけて、ワシントンDCの上院議会図書館での現地調査を行い、そこで最近の投資信託を巡る議会に関する様々な資料を調査・分析することができた。その結果、1992年にアメリカ証券取引委員会(SEC)が提出した報告書(『投資家保護-投資会社規制の半世紀-[Protecting Investors : A Half Century of Investment Company Regulation]』)において、高く評価されてきたアメリカの投資信託の企業統治(コーポレート・ガバナンス)は、1990年代の金融市場の急速な拡張期において多くの問題を発生させてきたことが判明した。また、アメリカ議会では、2003年から2004年にかけて、そのような実態に関する調査を行い、投資信託の企業統治の再構築を進める上で必要な制度改革を行ってきている。 なお、今年度の研究成果については、その一部を平成16年11月27日に桃山学院大学で開催された第62回証券経済学会全国大会で「アメリカ金融市場の発展と投資信託システム」という論題で報告を行った(この報告の内容については、「アメリカ金融市場の発展と投資信託システム」『証券経済学会年報』第40号、2005年7月に掲載が予定されている)。特に、そこでは、2000年以降のアメリカ投資信託の状況を踏まえながら、新しい市場型間接金融システムを構築していくための制度的条件について議論を行った。
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