本研究は、産業革命期の中心地域であるウエスト・ヨークシャーの主要地方都市(リーズ、ブラッドフォード、ハリファクス、ハダスフィールド、ウエイクフィールド)に関するデータベースを構築し、この地域内の経済社会の構造に関する解明を目指している。 今年度は、1801年から1851年のセンサスcensus(国勢調査)の分析を通じて明らかとなった各都市の雇用や産業構造について比較検討をさらにすすめた。つまり、特定の製造業に雇用が集中していた都市(ブラッドフォード)、製造業が雇用の中心だが流通・産業サービス業も重要な比重をしめていた都市(リーズ、ハリファクス、ハダスフィールド)、製造業が雇用の中心だが全体に占める比重は前述の諸都市よりもさらに低く流通業等の雇用の比重が高い都市(ウエイクフィールド)、といった都市の特徴は、同時代の各都市における公共制度のありよう、各都市のエリートの動向、そして、この地域の各都市の連携網によって、強化されていった可能性が高いことが明らかとなった。 また、今年度は、1822・1830・1853年に発行された商工人名録から、前記の諸都市に関する情報をデータベース化する作業を行った。現在のところ、1781・1784・1790・1805・1814・1822・1830年までの作業が入力内容の確認を行なっている段階にあり、1853年のものは入力途中であり、1837年の商工人名録等も次年度に入力予定である。 次年度については、各都市の特徴とその背景について、構築が終了したデータベースを順次用いて、産業構造その他の側面から多角的に考察してゆく。
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