研究概要 |
本研究の目的は,日系多国籍企業の海外現地法人において,現地のサプライヤー企業やカスタマー企業とどのような相互作用があり,その結果どのような知の創出があり,それをどのように多国籍企業内部に取り込み,競争優位につなげていくかを明らかにしようとするものである。 研究計画に従い,本年度も引き続き文献の収集をおこなった。これにより,欧米の研究による海外現地法人経営の理論的実証的研究の動向をさらにつかむことができた。 また,アンケート調査をおこなった。アンケート対象企業は,ヨーロッパに立地する日系多国籍企業のうち,化学,電気電子機器,自動車などの製造業のうち,R&D子会社,生産子会社に対してアンケート票を配布した。当初は,アンケート対象企業を絞り込み,欧州に設立された全子会社を対象として調査を行う計画であったが,研究を進めていくうちに,企業ではなく,機能を絞り込んで調査することの方がよいことがわかり,対象を変更している。現在,結果を集計・分析中である。 また,アンケート調査と平行してインタビュー調査をおこなった。本年度はベルギーへ赴き,日系企業を訪問調査した。訪問先は,旭硝子の欧州現地法人(1社),ダイキンの欧州現地法人(1社)である。それぞれの企業において,欧州における海外現地法人の経営の実態をお聞きし,本研究にとって有益な情報を得ることができた。 なお,昨年度の研究結果については,多国籍企業研究会西部部会9月例会において「海外子会社の研究〜日系企業の欧州子会社のケース〜」として報告をおこなった(9月25日,兵庫県立神戸学習プラザ)。 このように本年度においては海外現地法人における経営について,理論的な研究の蓄積ができ,また様々なケースを収集することができた。今後はその強みをどのように構築してきたか,そのメカニズムを明らかにすることを課題としたい。
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