平成16年度は、平成15年度の英国社会的企業調査に引き続き、11月にイタリアのトレント、ブレシアを中心に社会的協同組合や関係する諸団体のヒアリング調査を行った。具体的には、アルピ、グルッポ78、プロジェット92、コンソリダ、SPES、CGM、セルトーレといった社会的協同組合にヒアリング調査を行い、社会的協同組合が地域社会の中で、どのようなネットワークを形成しながら、社会的に排除された人々に対する労働市場への挿入(work integration)事業を行っているのかを理解することができた。また、トレント市の社会サービス局やトレント市のボランタリーサービスセンターにもヒアリングをすることで、社会的協同組合と行政施策との関係、それに社会的協同組合と他のボランタリー組織との分業関係等に関しても一定の知見を得ることができた。イタリアの社会的協同組合は、英国の社会的企業等と比較した場合、極めて強力な協同組合的な伝統の上に成立しているので、組織間の連帯関係が、コンソーシアムという形で形成されており、そうしたコンソーシアムが、社会的協同組合が行政からの事業を受託する際などに重要な役割を果たしている。今回の調査では、そうした協同組合間協働の具体的なあり方を、トレントという地域に集中することで、綿密に描き出すことができたことが最も大きな収穫だと思われる。また、前年度、行った英国社会的企業調査に関しては、福祉社会学会で中間報告を行い、その後、更にe-mailにて、追加のアンケート調査を行い、更には、イタリアの社会的協同組合調査の後で、ロンドンに立ち寄り、SEL、コア・アーツ、NEWTEC、タワー・ハムレットCDAの追加ヒアリング調査も行った。この調査では、前年度の英国社会的企業調査がソーシャル・ビジネス類型の社会的企業が多かったので、協同組合的な要素が強くマルチ・ステークホルダー型の社会的企業をヒアリングし、英国社会的企業の幅広い多様性を理解することができた。
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